2020年10月15日木曜日

LaTeXを使った文書作成(入門)

実験のレポートや論文を書くのにLaTeXを使いたい、でも始め方が分からないという方向けに、今回はLaTeXの説明とCloud LaTeXについて、及びLaTeXで文書を作る手順について記事を書いてみたいと思います。図や表の表示など、基礎的なコマンドについても少し触れる予定です。

Cloud LaTeXとは?

LaTeXによる文書の作成及びCloud LaTeXについてご紹介する前に、「そもそもLaTeXって何?」と思っている方もいる(というより自分がよく分かっていないのでまとめておきたい)と思うのでLaTeXについて少しご説明したいと思います。

LaTeXはTeXという組版システム(文字や図などをルールに則って配置し、印刷用の型を作る作業を行うシステム。「組版」は印刷用語)を用いたマクロ体系の1つで、簡単に言うとTeXを用いた文書作成の作業をより容易に行えるようにしたソフトのことです。LaTeXを用いると数式を綺麗に表現したり、テンプレートに基づき体裁の整ったレポートや論文の作成を行うことができるようになります。TeXを用いたマクロ体系には、LaTeXの他に和文組版を行えるよう拡張されたpLaTeXなど様々な種類があります。TeX及びLaTeXの読み方についてはいくつかあり、一般的にはTeXはテフやテック、LaTeXはラテフやラテック(調べたところ作者が認めているのでラテックスでも良いらしいです。また海外ではレイテックと発音されることも多いらしい?)と呼ばれることが多いです。

LaTeXを使えるようにするための環境構築を行うのは結構難しいです。自分もmacにLaTeXをインストールしようとした時は苦労しました。あとパソコンを買い替えたりするとまた環境構築をしないといけなくなるのも面倒です。今回の記事ではLaTeXの環境をパソコンに構築する方法については説明しないので、必要な方は適宜調べてください。

LaTeXで文書作成を行う上で、自分がお勧めしたいのが「Cloud LaTeX」というクラウドサービスです。Cloud LaTeXはLaTeXのオンラインコンパイルサービスで、このサービスの良いところは面倒な環境構築を一切行う必要がなく、アカウント登録を行うだけですぐにLaTeXによる文書作成を始めることができる点です。1GBまでであれば無料で利用することができ、複数のプロジェクトを作成・管理できます。データはオンライン上で管理され、編集内容も逐次保存されるので急にPCがフリーズしたり保存し忘れたせいで書いた文章が消えた、といった問題も生じにくく安心して文書を作成できます(卒論や予稿を書く際によくお世話になっています)。

Cloud LaTeXの登録の仕方と使い方については本家のページにて詳しく書かれているので、そちらをご参考いただければと思います。

Cloud LaTeX | Build your own LaTeX environment, in seconds | Acaric

LaTeX(ラテック,レイテック,ラテフなど) は Leslie Lamport によって開発された文書処理システムです. LaTeX は綺麗な組版が特長の一つです.LaTeX は基本的に構造と内容を分離して記述されます.LaTeX は...



今回はこのCloud LaTeXを用いて文書の作成を行っていきます(なお、これからご説明する内容はCloud LaTeX以外の環境にて文書を作成する場合でも共通する内容です)。 

文書作成の準備

Cloud LaTeXを利用する場合、マイページ上に「テンプレートから作成する」という項目があるのでそこからテンプレートを選ぶことですぐに文書を書けるようになります。「Cloud LaTeXへようこそ」と書かれているテンプレートを選んだ場合、以下の内容のmain.texを含むプロジェクトが作成されます。
\RequirePackage[l2tabu, orthodox]{nag}

\documentclass{jsarticle}
\usepackage[dvipdfmx]{graphicx}
\title{レポートタイトル}

\author{学生番号XXX-XXXX アカリク太郎}
\date{\today}
\begin{document}
\maketitle
\section{Cloud LaTeXへようこそ}

Cloud LaTeXは,\LaTeX を使った文書の作成・管理をクラウド上で行えるWebサービスです.
\LaTeX を使うと,複雑な数式
\begin{equation}
  \frac{\pi}{2} =
  \left( \int_{0}^{\infty} \frac{\sin x}{\sqrt{x}} dx \right)^2 =
  \sum_{k=0}^{\infty} \frac{(2k)!}{2^{2k}(k!)^2} \frac{1}{2k+1} =
  \prod_{k=1}^{\infty} \frac{4k^2}{4k^2 - 1}
\end{equation}
を含んだ読みやすくきれいな文書作成ができます.

本サービスは,\LaTeX 文書をリアルタイムに保存・コンパイルし,ユーザーアカウント別に管理します.
そのため,本サービスにログインするだけで,どこからでも作業を再開でき,ファイルを持ち歩く必要はありません.
また,様々な \LaTeX テンプレートが用意されているので,手軽に文書を作り始めることができます.

\begin{figure}
 \centering
   \includegraphics[width=60mm]{figures/Sample.png}
 \caption{ここにキャプションを挿入します}
 \label{fig:model}
\end{figure}

Cloud LaTeXでは,作成されるPDFそのままのレイアウトで表示するPDFビューモードがあり,コンパイル画面を確認しながら文書を作成することができます(図\ref{fig:model})
日本語では,pLaTeX / LuaLaTeX / upLaTeX でのコンパイルが可能です.
また,日本語や英語文書作成だけでなく,中国語・ハングルに対応した XeLaTeX のコンパイルも可能です.
ぜひ使ってみてください.
\end{document}

コンパイルすると以下のようなpdfファイルが作成されます。
Cloud LaTeXのテンプレートで作成した文書の例

このmain.texファイルの \begin{document} ~ \end{document} の中を編集することで文書の内容を変えることができます。文書を作る上で使用する代表的なコマンドについては後述します。多くのテンプレートにて初めに書かないといけない部分について、まずはご説明したいと思います。

使用するテンプレートによって細かな違いは出てきますが、共通する部分としてまず文書の最初に以下のコマンドを書きます。

文書の種類を設定するコマンド
\documentclass[オプション]{文書クラス}
・オプション:文字の大きさや構成を設定する(カンマで区切ることで複数指定可)
(用紙サイズをa4にする場合:a4paper、文字サイズを12ポイントにする場合:12pt など)
・文書クラス:論文や本など、文書の種類を設定する
(論文:jarticle、本:jbook など)

インストールしたいパッケージを指定(必要なパッケージをそれぞれ記述)
\usepackage[オプション]{パッケージ名}
例)文書内で画像を使う場合は \usepackage[dvipdfmx]{graphicx} を書く

文書のタイトル
\title{タイトル}

文書の著者の名前(複数名いる場合は \and で区切る)
\author{著者名}

日付(日付を文書内で表示させたくない場合は \date{} のように空白にする)
\date{日付}

タイトルと著者名と日付の出力
\maketitle
→ \begin{document} ~ \end{document} 内でこのコマンドを書くことで、タイトルと著者名と日付が出力される。

文章の記述
\begin{document}
文書の内容 \end{document}
→ この中に文書の内容を書く

これらのコマンドは大抵のテンプレートにおいて共通する項目です。なお先程のmain.texの一番始めにあった
\RequirePackage[l2tabu, orthodox]{nag}
というコマンドは古いコマンドやパッケージの利用を警告してくれるコマンドです。

LaTeXでよく使うコマンド

次に、文書を書く際によく使用するコマンドについていくつかご説明したいと思います。

■見出し(部・章・節・小節・小々節)の書き方
レポートや論文を書く際に、各内容ごとに見出しを書く必要が出てくると思います。以下のサイトがとても分かりやすく書かれているのでそちらを是非ご参考ください。

よく使うコマンドとしては \section{} や \subsection{} あたりだと思います。節や小節を設定した例は以下の通りとなります。なお、見出しに番号を表示させたくない場合は \section*{} のように * をつけることで番号が表示されなくなります。
\section{節の見出し}
\subsection{小節の見出し}
テスト\\


■改行・空白(特殊記号は参考ページへ)
改行や空白を作る場合のコマンドにはいくつか種類がありますが、代表的なものとして
改行したい場合: \\
一文字分の空白: \quad
があります。


■左揃え・右揃え・中央揃え
文章の位置を変えたい場合には以下のコマンドが使用できます。
(環境)
左揃え: \begin{flushleft} ~ \end{flushleft} 右揃え: \begin{flushright} ~ \end{flushright} 中央揃え: \begin{center} ~ \end{center} (コマンド) 左揃え:\raggedleft 右揃え:\raggedright 中央揃え:\centering

※図表を中央揃えで表示させたい場合は \centering  を使うようにしてください。


■コメントアウト
文書を書く時に、本文には反映させずにメモとして残しておきたい内容はコメントアウトしておきましょう。
一行のみの場合: %コメントアウトしたい内容

複数行をコメントアウトしたい場合(commentパッケージの読み込みが必要): 
\usepackage{comment}

\begin{comment}
コメントアウトしたい内容
\end{comment}


■図表の表示とキャプション ・ラベル
LaTeXではjpgファイルやpngファイル、epsファイルなどを読み込むことができます。画像を表示させる場合にはgraphicxパッケージを読み込む必要があります。また、画像を表示するためにはxbbファイル(画像のBB情報を記述したもの)というファイルが画像ごとに必要となるので別途作成してください。xbbファイルはPCのターミナルにて extractbb コマンドを用いることで生成することができます。

xbbファイルの作成PCのターミナル上で実行
extractbb 画像ファイル名(例:sample.png)

図の表示(xbbファイルは画像ファイルと同じ階層に配置すること)
\begin{figure}
\centering \includegraphics[width=60mm]{sample.png} \caption{キャプション} \label{fig:caption} \end{figure}
キャプションは図の下に表示されます。文章中で図番号を表示したい場合は \ref{labelコマンドで書いた内容(この場合 fig:caption)} で表示できます。

表の表示
表の作成については以下のサイトが便利です。表を作るとコードが生成されるので、それをそのまま貼ることで文書上で表を表示できます。

コードの構成としては以下の通りとなります。
\begin{table}[位置の指定]
  \begin{tabular}{列の指定}
    表の内容
  \end{tabular}
\end{table}


■数式
数式については説明すべき内容が多いので説明を丸投げして他の方にお願いしたいと思います。以下のページにて詳しく書かれているのでご参考ください。

一例としては以下の通りとなります。
\begin{equation}
  \frac{\pi}{2} =
  \left( \int_{0}^{\infty} \frac{\sin x}{\sqrt{x}} dx \right)^2 =
  \sum_{k=0}^{\infty} \frac{(2k)!}{2^{2k}(k!)^2} \frac{1}{2k+1} =
  \prod_{k=1}^{\infty} \frac{4k^2}{4k^2 - 1}
\end{equation}


(文章中で数式を埋め込む場合、自分はインライン数式モードをよく使っています。)


■参考文献
参考文献を記述する場合はthebibliography環境を使用します。
\begin{thebibliography}{*}
  \bibitem{キー1} 著者名1: \textit{文献のタイトル1}, 論文誌のデータやページ・発行年など
  \bibitem{キー2} 著者名2: \textit{文献のタイトル2}, 論文誌のデータやページ・発行年など
\end{thebibliography}


以上、自分がLaTeXで文書を作る際によく使うコマンドを中心にピックアップしてみました(他にも載せたいコマンドが出た際には追記していきます)。他にも様々なコマンドがあり、目的に応じた文書を手軽に作成できるのがLaTeXの強みだと思うので、興味のある方は是非一度触ってみることをお勧めしたいです。


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