高専や大学で研究をしたことがある方はいつ頃研究テーマを決めていましたか?
研究室によっては先輩の研究テーマを引き継いだり、教授から提案されたテーマについて研究を進めるというところもあるかと思います。もちろん研究室にもよると思いますが、そういった場合早い段階で研究テーマを決めることができていたのではないでしょうか。
自分が所属していた研究室(大学及び大学院)では方針として”情報システムを用いて人の活動を支援する”ことを軸にしており、テーマ自体に縛りがないので比較的自由に学生が研究テーマを自分で選んで研究を行うことができました。今までにもDQNを用いてパズルゲームのゲームAIを作成する研究やBluetoothを用いた混雑度推定、運動が作業への集中に与える影響など様々なテーマのものが行われており、好きな研究を行うことができる環境であると思います(自分は学部・大学院ともにSNSにおけるデマの拡散問題に関する研究をしていました。大学院の研究内容は別記事にまとめています)。その分、やりたいことが明確に決まっていなかったり新規性のあるテーマに結びつけることができないと研究テーマとして中々認めてもらえない環境であるとも言えます。
自分も学部生の時の卒業研究で研究テーマを決めることができず苦労した経験があります。自戒の意味も込めて、研究テーマを早い段階で決められなかった時の苦労話を書きます。
はじめはある程度やりたいことは決めていた
研究室に入る前は研究テーマをあまり明確に考えていなかったのですが、学部4年生になってから今の研究室でのゼミが始まり、論文を読んだりして少しずつどのような研究がしたいのかを具体的に考え始めました。8月頃に教授と相談をして研究の方向性を決め、「情報の信頼性を評価するシステム」を作るという研究テーマに決めます。中間発表でもそのテーマで発表したのですが、関連研究の論文を読んだり研究室の人たちの意見を聞くうちに情報の信頼性を評価するのは難しいのでは?という答えに至りました。そこで今度はTwitterにおけるデマの拡散による被害を減らすことを目的とした研究にシフトしようとしました。
具体的な方法はあまり思い付いていなかったのですが、関連する情報の提示やデマの可能性がある情報に対して注意換気を行うような研究にしようかなと考えていました。しかしいくら自分の考えを言っても「SNSで好きなことを言えなくするのは良いこととは思えない」と教授の納得を得ることができず、12月後半になってもテーマが決まらない状態となってしまいました。
約一ヶ月で研究+論文執筆をやらないといけない状況に
焦りに焦って、冬休みに入ってすぐに教授と相談して何とかテーマを決めることができました。研究テーマについて、デマに対して誤りを指摘する訂正情報に着目し、デマの拡散収束過程と訂正情報の存在との関連性を分析することにしました。卒論提出の締め切りが1月末であるのに対してテーマが決まったのが12/26頃?で、準備から分析の実施、結果に対する考察、卒論の執筆までを約1ヶ月で終わらせないといけない状況にこの時点で追い込まれています。
分析のためにはTwitterにおいて過去に実際に拡散されたデマツイート及びそれに対する訂正ツイート(発生から収束するまでの全体のデータ)を数十事例分探して集める必要があり、同時にツイートを収集するためのプログラムとツイートの投稿件数の時系列変化を出力するためのプログラム、また条件を変化させた場合の拡散収束過程の変化を見るためのシミュレータを作成する必要もありました。シミュレータやツイート収集プログラムの作り方を調べたり友人のアドバイスを受けてプログラムはPythonで作ることが適していると思ったのですが、この時Pythonでの開発経験はほとんどありません(勉強したこともほぼない状態)。迷っている時間が無いのでPythonを自力で勉強しながら冬休み中(~1月初め)に何とか完成させてそのまま分析を行い、それっぽい結果を出しました。この時10例前後のデマツイートで分析していたのですが、教授から20~30事例は欲しいと言われさらにツイートの収集・分析を行ったり、シミュレーションについて適切なパラメータを探したりと分析には時間がかかりました(白目)。
1月中旬になり、分析と考察を進めている途中ですが卒論も書かなければならないので締め切りまで約2週間というタイミングで本格的に卒論の執筆にも取り掛かります。提出前に教授に見せて添削をしていただかないといけないので実質的にはもっと短く、毎日焦りと不安からメンタル的にもきつかったです。結果的に締め切りまでに卒論を提出でき、その後予稿と発表スライドも何とか完成させて卒論発表も乗り越えることができましたが1月中はとにかくずっと大変でした。
テーマを決める上でやるべきこと
長々と書いてしまいましたが、自分の体験談の部分については”テーマを早めに決めないとしんどくなる”ということが伝われば十分です。
一番お伝えしたいのはテーマを決める上でやるべきことについてです。学部生及び大学院生になってからの経験をもとに、自分が思ったことについて以下にまとめたいと思います。
■自分がやりたいこと・興味のあることをいくつかピックアップしておく
自分では良いと思ったテーマであっても教授の納得を得られない可能性はあるので、スムーズに決められるようにするためにもやりたいことや興味のある分野・テーマについてはいくつか候補を考えておくと色々と安心かなと思います。自分の場合、中間発表前の時にタスク管理やセキュリティに関する研究にも興味がありましたがいずれも教授に難色を示され、結果的に別の候補だった情報の信頼性というテーマになりました。また、研究が始まるとそのテーマについてずっと考え続けることになるので研究としてやるのであればテーマはある程度自分が興味を持てるものにした方が良いです。興味のないことだとモチベも保ちづらくなってしまうので、可能であれば自分の好きな分野や興味を持っている分野に関するテーマ、またはそれに関連するようなものを研究テーマにすることをお勧めしたいです。
■関連研究や先行研究の論文をたくさん読む
理系の研究の場合基本的に新規性を求められると思います。自分もこの新規性という言葉によりテーマが決まらず長く悩まされていたのですが、新規性のあるテーマにするためには関連研究や先行研究をとにかくたくさん調べる必要があります。興味のあるテーマに関する論文を色々と読んでいると先行研究でやられていないことや課題として挙げられていることが段々と分かってくると思うので、その中からやれそうなことを研究テーマとして選ぶと新規性のあるものにできるかと思います。先輩や先生も言っていたのですが、研究テーマを選ぶコツとしては「興味のあることに関する論文を幅広く読んで、その中で特に興味を持ったテーマについて先行研究の論文をたくさん読んで、その様々な先行研究の中でやられていないこと・課題として挙げられていることを研究テーマのアイデアの参考とする」ことです。研究活動において論文を探したり読むことはとても大切な工程の一つなので、テーマがなかなか決まらない人はなるべく広い視野で情報収集してインプットをたくさんしてみるのも良いかなと思います。
■興味のあることはとりあえずやってみる
論文探しをしていると興味のあるテーマがいくつか思いついてどれが良いのか迷うこともあるかと思います。そのような時はそのテーマについて少し触れてみる・研究を進めてみることも大切だと思います。例えば、ツイートの分析に関する研究であれば実際にツイートを収集するプログラムを作ってクラスタリング等を行ってどのようなことが分かるかを実際に試しにやってみたり、集中度に関する研究であれば研究室の人たちにアンケートを取って普段の習慣等について聞いてみる等、試しに少し触れて研究の感触を確認することはテーマ選びをする際に大きなヒントになるかなと思います。
研究テーマを考えるのは時間も体力も使うのでとても大変だと思います。自分もそうだったのでテーマが決まらない時の不安さ・大変さはよく分かるのですが、そのような時はまずは上記のことを意識して自分でインプットしたり行動してみてください。その上で、悩んでいる時はやはり教授と相談することが一番大切だと思います。「自分はこのようなことについて研究したいと思っている」と自分の考えを話しつつ相談すれば「こんな研究テーマはどうか?」とアドバイスをもらえると思います。悩んだままで時間が過ぎてしまうと研究ができる時間がどんどん減ってつらくなるので、行動と相談を早い段階で行うことをお勧めします。
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