2020年9月23日水曜日

身近な認知バイアスと自分がしている対策

人の脳は様々なバイアスを作り出します。そしてそれらは判断に影響を及ぼします。認知バイアスを生じないようにしたり完全に消したりすることは難しいですが、影響を減らすために対策を講じることはできるのではないかと思います。日常生活でみられる認知バイアスについて触れたあとに、自分が認知バイアスによる影響をできるだけ減らすために普段行っていることについてお話ししたいと思います。

身近な認知バイアス

人の認知バイアスには数多くのものがあります。その中で、自分が読んでいた本の中で出てきたものや日常生活で良くみられるものをいくつかピックアップしてみました。

確証バイアス
自分の信念と一致するものだけを見ようとする傾向。いわゆる「自分が見たいものだけを見ようとしてしまう(都合の悪いものは見ないようにする)傾向」がこの確証バイアスです。SNSでもこの確証バイアスは問題点の一つとして挙げられています(SNSにて個人に合った情報のみが表示される「フィルターバブル」により、確証バイアスが強まってしまう)。
例)「これは凄く良い商品だ」と思っている商品のレビューを見る時に、否定的な意見をしているレビューを避けて好意的な内容のものだけを見ようとしてしまう。

フィルターバブルのイメージ
フィルターバブルのイメージ

ハロー効果(後光効果)
一度好ましいと感じたものに対しては他の部分も好ましいと感じやすくなってしまう傾向(「あばたもえくぼ」ということわざはこれにあたる)。ハロー効果は逆方向にも働く。
例)好きな芸能人に対しては、普段の生活がだらしないといったことが分かっても「そんな一面も可愛い」とあらゆることを好意的に捉えてしまう。反対に、「この人は好きになれない」と感じた相手に対してはその人がどのような活動をしても否定的な目で見てしまう。

後知恵バイアス
ある事象が実際に起きた後、それに合わせて過去の自分の考えを後付けでいいように修正してしまうバイアス。
例)人の行動に対して、その人が行動する前は何とも思っていなかったのに失敗したことを知ると「やっぱりね、失敗すると思ってたんだ」と過去の自分の考えをいいように変えてしまう。

楽観バイアス
自分に悪いことが起こる可能性を過小評価し、良いことが起こる可能性や自分の行動を過大評価する傾向。
例)インフルエンザ等が流行しても自分はかからないと考えて、感染対策等を怠ってしまう。

感情バイアス
好きか嫌いかなど、その時の気分や対象への感情によって物事を判断してしまう傾向。感情的要因が意思決定に影響を与えてしまうバイアス。
例)嫌なことがあったりして不機嫌な状態の時に、深く考えずに意思決定を下してしまう。嬉しいことがあって良い気分の時に余計な物まで買ってしまう。

利用可能性ヒューリスティック
思い浮かびやすさによるバイアス。物事の意思決定を下す際に、頭に浮かんできやすいものを優先して判断してしまう。
例)コンビニでどんなお菓子を買うか迷った時に、CMでよく見かけるものを選んでしまう。

代表性ヒューリスティック
ある事柄を、その対象を象徴する・代表的なイメージをもとに判断してしまう傾向。「偏見」はこれにあたる。
例)サングラスをかけてマスクをしている人に「怖い」「怪しい」というイメージを持ってしまう。


自分が行っているバイアスへの対策

いくつか身近にある認知バイアスの例を挙げてみました 。こうしたバイアスは人の脳の仕組み上どうしても生じてしまうので発生させないようにするのは難しいです。

認知バイアスはシステム1(直感的な早い思考)の特徴の一つなので、認知バイアスによる影響を減らすためにはシステム2(論理的な遅い思考)を稼働させることが必要となります。自分は認知バイアスへの対策として以下のことを意識しています。

■バイアスの存在と内容を認識・理解する
まずは認知バイアスの存在を認識し、その内容を知っておくことが必要です。バイアスの存在を知っておくと、意思決定の時に「今もしかしたらあのバイアスが働いているかもしれない」と客観的に見ることができるようになります。また判断をする時に「あのバイアスが起きるかもしれない」と事前に準備をすることもできるようになります。認知バイアスには様々なものがあるのでそれらを全て覚えるのは難しいですが、日常生活でよく出てくるものだけでも覚えておくと良いかもしれません。


■物事を批判的に見る(意思決定の時にシステム2を稼働させる)
ここで言う批判的とは「証拠に基づいて論理的に考えたり、自分の考えが正しいかどうかを立ち止まって内省的に考えようとする状態」を指します。物事を見る時や意思決定の時にシステム2を稼働させて、自分の判断や思考、自分が置かれている状況などを客観的に見るようにすることで、認知バイアスによる影響を少しでも減らせるようになると思います。システム1を意識的にコントロールすることは難しいですが、システム1による判断をシステム2で一度論理的に処理する、自分のことを客観的に見つめてみる、というプロセスがより良い意思決定をする上では必要になると思います。

自分はこの「バイアスの存在を意識する」「意思決定の時に自分の判断や思考、置かれた状況を客観的に見て内省する」というプロセスを普段から意識して行っています。このプロセスにより自分の意思決定を客観的に・冷静に把握できるようになり、認知バイアスの存在を踏まえて判断できるようになりました。
今回はシステム1の弱点である認知バイアスと自分が行っている対策の一例を書いてみました。意思決定の際にはシステム1とシステム2を組み合わせることでより精度よく判断できるようになるので、そのことを普段から意識できるようにすると良いかなと思いました。

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